相談員として利用者の生の声と接していると、現状の社会の流れを感じずにはいられません。 日本では、仏教徒が全体の9割を占めるといわれています。しかし、実際のところ自分自身が仏教徒であることを認識している人は、若い世代になればなるほど、少なくなっています。
今まさに葬儀と直面している喪家の声を聞くことが多い中で「寺院を必要」と考えている人が思っていた以上に少ないことに驚かされます。葬儀についての様式についてたずねると「無宗教です」と堂々と答える人がなんと多いことでしょう。しかし、本当にそうなのかどうかよくよく尋ねてみると、「お寺にお墓がある」とか「お坊さんに読経してもらいたい」だから「仏式で・・・」という有様なのです。そのような話だから自分の菩提寺が何処で宗派が何なのかわかるはずもありません。
また、今後の寺院とのお付合いについてたずねると「めんどくさそうだから」という答えも少なくありません。おそらく40代以前の世代に寺院についてのイメージをたずねると「敷居が高い」というよりは、「どんな所なのかわからない」「葬儀のときに読経してくれる人」というのが正直なところでしょう。ですから、「菩提寺・檀家・お布施」・・・・・・?といわれても言葉の意味がよくわからず、また、誰かにそれらについて教えてもらう機会もなく過ごしている・・・。だとしたら、いざ、葬儀となったとき、急に寺院から高額のお金を要求されたり、決まりごとを押し付けられたような感覚になってしまうのも無理もありません。
15年前までは、結婚式というと神式でする人がほとんどでしたが、最近は、ファッションのようにキリスト式を選択する人が増えてきました。キリスト式で結婚式を挙げるときに牧師を頼む感覚=その場だけのお付合い・・・あと、数年後にはこういった人々が見送る立場になっていくのだとすると、お葬式もその場だけ・・・ということも十分考えられます。そう思うと、今後の寺檀関係に不安を感じずにはいられません。
少子高齢化社会を迎えるにあたって、今後、ますます葬儀や供養のあり方が縮小傾向へと変化していくと考えられています。それに伴い、近い将来、閉鎖せざるをえない寺院もでてくるといわれています。寺院情報案内センターでは、寺院は、精神的にも肉体的にも「癒し」を与えてくれる場であり、昨今の殺伐とした社会にはとても必要な存在だと考えています。ですから、せっかく身近にある寺院が減少してしまうかもしれないということは、とても残念なことです。寺院の皆様へ社会のニーズをお伝えすることで、寺檀関係や社会とのかかわり方を考えるひとつの材料にしていただけたらと思います。また、同時に、宗旨宗派を超え、客観的な様々な情報を社会へ送り届けることで、もっと多くの方に寺院を身近に感じ、良さを知ってもらいたいと思います。そうすることで、社会一般市民の方々が、心豊かに人生をおくるためのお手伝いをできたらと考えています。
|